ベン・ジョンソンによれば、『唄とソネット』はダンが25歳になる前の作品であるという。大部分の作品はダンがケンブリッジ大学を出てから、アン・モアと結婚するまでに属するとみられるが、確かな創作年代ははっきりしない。1929年に『セント・ポール寺院の司祭ジョン・ダンの全詩集及び散文選集』を編纂したジョン・ヘイワードは、散文集「パラドックスと諸問題」と同じ頃の作品としている。
これらの詩が最初に出版されたのは1633年であるが、『唄とソネット』としてまとめられたのは1635年の版である。現代の編纂はほとんどが1635年の配列に準じているが、ヘレン・ガードナーは、1600年以前の詩と、1602年以後の作品と思われる詩の二つのグループに分けて配列している。
『唄とソネット』の配列は、このように1635年の出版に準じた配列と、創作年代順と思われる配列とで編纂されることが多いが、A. J. スミスはタイトルのアルファベット順に編纂している。この翻訳ではA. J. スミスの編纂した全詩集を使用しているので、配列はスミスに従っている。そのため、参考に訳注にタイトルの原題を付記する。
『唄とソネット』は、全部で55篇からなっている。
1 空気と天使
2 一周年記念
3 幽 霊
4 餌
5 花
6 夜明け
7 砕かれた心
8 聖列加入
9 共有財産
10 計 算
11 制限された愛
12 呪い
13 毒 気
14 溶 解
15 夢
16 恍 惚
17 臨 終
18 恋よさらば
19 熱 病
20 蚤
21 弔 い
22 おはよう
23 無責任
24 贈られた黒玉の指輪
25 影についての講釈
26 形 見
27 恋人の無限性
28 愛の錬金術
29 愛の神様
30 愛の食事療法
31 愛の取引
32 愛の成長
33 愛の神の高利
34 伝 言
35 否定的愛
36 聖ルーシーの日の夜想曲、一年で昼が最も短い日
37 逆 説
38 桜 草
40 聖遺物
41 自己愛
42 唄
43 唄
44 ソネット―愛のしるし
45 日の出
46 三重の馬鹿