30 愛の食事療法 ジョン・ダンの部屋

 

なんとまあ、とてつもなく煩わしく、

重荷となるほど太っていたことだろう、僕の恋は。

太らぬように、

均整を保つように、

食事療法をさせ、恋にとって疫病神の

分別を与えなかったなら。

 

恋に許したのは、一日一回だけの溜息、

僕の幸運と不運の分け前はそれっきり。

それで、恋の奴、こっそりと

僕の恋人の心から溜息を盗みとり、

ご馳走にしようと考えるなら、それは

偽物、僕を思ってのものではないと教えてやろう。

 

恋の奴が僕から涙を搾り取ろうとしても、涙に

軽蔑と嘲笑で塩味をつけ、滋養分をなくしてやる。

彼女の涙を吸ったとしても、おまえが飲んだのは

涙なんかじゃないと言ってやる、

飲んだのは、おまえの食い物と同じ、まがいもの、

誰かまわずに向ける目から流れるのは、涙ではなく、汗でしかない。

 

恋が命じたことは、何でも書いたが、

手紙は全部焼き捨てた。彼女が僕に恋文を寄こしたとき、

その厚意で恋は太ったが、

僕は言ってやった、この恋文で

分け前の権利をもらえたからといって、何の役に立つ、

相続順位は四十番目だというのに。

 

こうして僕は恋の鷹を飼いならし、

思いのままに、時処を選ばず、飛ばした。

狩りに飽きれば、寝て休むが、

ときには、鷹匠よろしく、

誓い、恋文、溜息、涙で、女を獲物に追い立てる。

獲物が死んでも、見失っても、話しの種にし、あとは寝るだけ。

 

 

【訳注】

原題:’Love’s Diet’

 

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ジョン・ダン全詩集訳 宗教詩