一時間恋し続けたという男がいれば、
そいつは気違い沙汰だ、
愛がそんなに早くつきるというのではない、
愛はもっと短い時間で十人の男を食いつくすのだ。
誰が信じるだろう、ぼくが
一年もの間ペストに罹っていたと言えば。
笑わぬ者はいないだろう、ぼくが
火薬瓶が一日中炸裂しているのを見たと言えば。
ああ、心はなんとちっぽけなものか、
いったん愛の神の手中に落ちたなら。
どんな悲しみであれ、ほかの悲しみにも
役目を残し、なにがしかの務めをさせるもの。
悲しみは向こうからやってくるが、愛の神はぼくたちを引き寄せ、
噛みもせず、一気に一呑み。
恋は機関銃、全軍を一斉射撃で一網打尽、
恋は暴君のカマス、ぼくらの心は雑魚。
そうでないとすれば、ぼくの心はどうなったのか、
はじめてきみを目にしたとき。
ぼくは心と一緒に部屋に入ったが、
部屋を出たときには、心はぼくについてこなかった。
心がきみのもとに去ったのなら、
ぼくの心はきみの心に教えていたはず、もっと
ぼくに憐れみをかけることを。だが、悲しいことに、愛の神は
最初の一撃で心をガラスのように打ち砕いてしまった。
無は無に帰するというが、
絶対的真空は存在しない、
とすれば、ぼくの胸には、
ばらばらであっても、すべての破片が残っているはず。
割れた鏡の破片が、
小さな顔を無数に写し出すように、
ぼくの砕け散った心は、愛し、望み、崇めることができても、
そのような恋の後では、恋する力などもはやない。
【訳注】
原題:’The Broken Heart
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