7 砕かれた心 ジョン・ダンの部屋

 

一時間恋し続けたという男がいれば、

そいつは気違い沙汰だ、

愛がそんなに早くつきるというのではない、

愛はもっと短い時間で十人の男を食いつくすのだ。

誰が信じるだろう、ぼくが

一年もの間ペストに罹っていたと言えば。

笑わぬ者はいないだろう、ぼくが

火薬瓶が一日中炸裂しているのを見たと言えば。

 

ああ、心はなんとちっぽけなものか、

いったん愛の神の手中に落ちたなら。

どんな悲しみであれ、ほかの悲しみにも

役目を残し、なにがしかの務めをさせるもの。

悲しみは向こうからやってくるが、愛の神はぼくたちを引き寄せ、

噛みもせず、一気に一呑み。

恋は機関銃、全軍を一斉射撃で一網打尽、

恋は暴君のカマス、ぼくらの心は雑魚。

 

そうでないとすれば、ぼくの心はどうなったのか、

はじめてきみを目にしたとき。

ぼくは心と一緒に部屋に入ったが、

部屋を出たときには、心はぼくについてこなかった。

心がきみのもとに去ったのなら、

ぼくの心はきみの心に教えていたはず、もっと

ぼくに憐れみをかけることを。だが、悲しいことに、愛の神は

最初の一撃で心をガラスのように打ち砕いてしまった。

 

無は無に帰するというが、

絶対的真空は存在しない、

とすれば、ぼくの胸には、

ばらばらであっても、すべての破片が残っているはず。

割れた鏡の破片が、

小さな顔を無数に写し出すように、

ぼくの砕け散った心は、愛し、望み、崇めることができても、

そのような恋の後では、恋する力などもはやない。

 

【訳注】

原題:’The Broken Heart

 

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ジョン・ダン全詩集訳 宗教詩