恋する者は、恋をしている、とは言わぬもの、
真(まこと)の恋をする者だけが、恋を知る。
恋する者は、他の誰も恋をすることはできないと思い、
自分以外に恋ができるはずがないと考える。
僕は恋をしたとは言えない、だって誰が言えよう、
自分は、昨日殺されたと。
恋の過熱で死ぬのは、老人ではなく若者、
老人が死ぬのは、血が冷めたため。
死ぬのは一度だけ、一度恋した者は死んだ者、
恋したと二度口にする者は、嘘つきだ。
しばらくは動いているように見えても、
それは感覚の迷い。
そのような生命は、光源が消えてなお、
余光が残っているようなもの。
あるいは、固体の火が消えてなお、
二時間後に残っている余熱のようなもの。
僕は一度恋をして、死んだ。そして今、
自分の墓碑となり、墓となった。
死者が辞世の言葉を刻むように、僕もそうしよう。
見よ、恋に殺されし者、ここに眠る。
【訳注】
原題:The Paradox’
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