37 逆説 ジョン・ダンの部屋

 

恋する者は、恋をしている、とは言わぬもの、

真(まこと)の恋をする者だけが、恋を知る。

恋する者は、他の誰も恋をすることはできないと思い、

自分以外に恋ができるはずがないと考える。

僕は恋をしたとは言えない、だって誰が言えよう、

自分は、昨日殺されたと。

恋の過熱で死ぬのは、老人ではなく若者、

老人が死ぬのは、血が冷めたため。

死ぬのは一度だけ、一度恋した者は死んだ者、

恋したと二度口にする者は、嘘つきだ。

しばらくは動いているように見えても、

それは感覚の迷い。

そのような生命は、光源が消えてなお、

余光が残っているようなもの。

あるいは、固体の火が消えてなお、

二時間後に残っている余熱のようなもの。

僕は一度恋をして、死んだ。そして今、

自分の墓碑となり、墓となった。

死者が辞世の言葉を刻むように、僕もそうしよう。

見よ、恋に殺されし者、ここに眠る。

 

 

【訳注】

原題:The Paradox’

 

 

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ジョン・ダン全詩集訳 宗教詩