35 否定的愛 ジョン・ダンの部屋

 

目や、頬、唇を獲物と狙う連中のように、

低く舞い降りることは一度もなかった。

また、美徳や精神を重んじる連中に較べて、

高く飛ぶことにおいて引けを取ることもなかった。

感覚や理性によって、何が

愛の火に油を注ぐか知っていたからである。

僕の愛は、無知であるけれども、気力はある。

欲しいものが何であるか分かっていても、

望んだところで、手に入るものでもない。 

 

完全無比なるものを

表現する方法が、

否定によるしかないとすれば、僕の愛がそれだ。

すべての人が愛す、すべてのものに対し、僕は否定する。

謎解きの名人がいて、

我々が知り得ない己自身を知る者がいれば、

愛の無が何であるかを教えて欲しい。

ともかく今は、安らぎがあり、慰めがある、

成功しなくても、失敗しないのだから。

 

 

【訳注】

原題:’Negative Love’

 

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ジョン・ダン全詩集訳 宗教詩