20 蚤 ジョン・ダンの部屋

 

この蚤をご覧なさい、こいつを見れば、

きみが僕に拒んでいるものがどんなに些細なことか分かるはず。

こいつはまず僕の血を吸ってから、つぎにきみの血を吸う、

そこで、こいつの中で僕ら二人の血が混じり合う。

それが罪であるとか、恥であるとか、

処女喪失などとは言えないはず。

こいつは求婚する前にお楽しみ、

二人の血を一つにしてお腹を膨らませては、

悔しいことに、僕たちよりもやりたい放題。

 

あっ、待ちたまえ、一匹の蚤で三つの命を奪うのは。

蚤の中で一緒になった僕たちは、結婚したも同然。

この蚤はきみであり、僕でもある。こいつは

僕たちの初夜の新床であり、婚礼の神殿でもある。

たとえ両親に反対されようと、僕たちは結ばれて、

この黒玉の生きた壁の中に匿われている。

僕を殺すのがきみの慣わしであっても、

こいつに手を出さないでくれ。きみまで殺すことになる。

三つの命を殺すことで三つの罪を犯すのは、神の冒涜。

 

残酷なあわてもの、きみはもう

罪のないものを殺して、自分の爪を朱に染めたのか。

この蚤にどんな罪があるというのか、

きみから一滴の血を吸い取っただけではないか。

だが、きみは得意気に言う、

僕も、きみも、少しも弱っていないと。

なるほど、それでは恐れる必要はないわけだ。

きみが僕に身を任せたところで、失うものは、

この蚤の死がきみから命を奪った程度のことでしかないのだから。

 

 

【訳注】

原題:’The Flea’

1633年の最初の詩集では『唄とソネット』の34番目にあったが、1635年の版ではその冒頭に置かれた。この詩は当時、相当の人気があった。

 

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ジョン・ダン全詩集訳 宗教詩