溜息の嵐に打たれ、涙の洪水で水浸しになり、
僕はここまで春を求めてやって来た。
ここで、僕の目と、僕の耳に、
どんな病も癒すという香油を注いでもらうため。
ああ、それなのに、僕は自分を裏切って、
恋の毒蜘蛛連れてきたので、すべてが一変し、
天の恵みの甘露が苦い胆汁と化した。
それに、この庭を本物の楽園にしようと、
蛇まで連れてきたのだった。
僕はもっと健康でいられただろう、冬が来て、
この庭の輝きを暗闇で包み、
厳しい霜が降りて、庭の木々が
僕に面と向かって嘲笑うのを止めていたら。
それでも、僕は、この恥辱に耐えることも
できなければ、恋を捨てることもできない。だから、愛の神よ、
僕を、この庭の何か感覚のないものに変えて欲しい。
恋人参にしてくれれば、ここで呻き声をあげることができる。
石造りの噴水にしてくれれば、年中泣いて暮らせる。
恋する男たちよ、水晶の瓶を持ってここに来て、
恋の酒である僕の涙を受け取り、
家にいる君たちの恋人の涙と飲みくらべるがいい。
僕の涙と違う味なら、そんな涙は空涙。
ああ、心は目の輝きにあらわれず、
涙で女心を測ることもできない。
影を見ても、何を着ているか分からぬように。
ああ、片意地な女、操正しきは彼女だけ、
彼女は貞節なるがゆえに、その真心が僕を殺す。
【訳注】
原題:'Twicknam Garden'
※1 トウィックナムの庭園は、ダンの保護者であるベッドフォード伯爵夫人ルーシーが、1607年から1618年まで住んでいた処。
※2 人の形をした恋人参(マンドレーク)は、地中から掘り出される時、苦しんで呻き声を出すと信じられていた。
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