32 愛の成長 ジョン・ダンの部屋

 

僕の愛は、僕が思っていたほど

純粋だとは到底信じられない。

僕の愛は、草木のように

四季とともに変化し、季節の移り変わりに耐えてきた。注:1

僕は嘘をついていたようだ、冬の間ずっと僕は、

愛は無限だと言い張っていたのに、春になって愛が成長するとは。

悲しみを癒すのに新たな悲しみをもってするという

愛というこの妙薬は、第五元素注:2の真髄などではなく、

魂や感覚を苦しめる雑多な混合物に過ぎず、

その効能は太陽からの借りものでしかない。

愛は、純粋なものでも、抽象的なものでもなく、

ミューズの女神のほかに恋人はなく、

すべての元素の混合物と同じように、

瞑想にふけることもあれば、行動に移すこともある。

 

だが、春が来て愛は成長したのではなく、

ただ目立つようになっただけ。

天空で、星の輝きが大きくなった

ように見えるのは、太陽の力によるのと同じこと。

愛の優しい行為が、枝に咲く花のように、

目覚めた愛の根元から、いま芽吹こうとしている。

水面(みなも)にできた一つの波紋が、幾重にも

拡がっていくように、愛もまた大きくなっていく。

多くの天球の輪も、一つの天空に過ぎないように、

愛の拡がりもすべておまえを中心にした同心円。

春が来るたびに、愛は熱を増すが、

王様たちが戦時に新税を

取り立て、平和が戻っても減税しないように、

冬が来ても、春に増えたものは減りはしない。

 

 

【訳注】

原題:’Love’s Growth’

注:1 イザヤ書40章6-7節、「肉なるものはみな草に等しい。永らえても、すべては野の花のようなもの。草は枯れ、花はしぼむ」

注:2 「第五元素」は四元素(空気、土、水、火)の外にあり、万象に拡充して宇宙全体を構成すると考えられた要素。

 

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ジョン・ダン全詩集訳 宗教詩