40 自己愛 ジョン・ダンの部屋

 

        僕の墓が暴かれ

次なる客が招かれる時、

(墓も当節では女の性(さが)を見習って

一つのベッドに何人も入れるようになった)

        墓を掘る人足が、

僕の骨のまわりに金髪で作られた腕輪を見つけても、

        そのままそっとしておいて、

愛し合った二人が眠っているのだと思い、

最後の審判の日に、二人の魂がこの墓で

再会し、しばしの逢瀬を過ごすために

このような工夫を考えついたのだと思って欲しい。

 

        このことが、邪宗のはびこる

        時代や、国で起こったなら、

        二人を掘り上げた墓掘りは、早速、

        司祭や王様のところに届け出し、

          二人は聖遺物に祀り上げられるだろう。

きみはマグダラのマリアとなり、僕は

それにあやかる者となる。(注:1

すべての女性が二人を崇め、男たちの中にも崇める者がいるだろう。

そのような時代には、奇跡が求められるので、

汚れのない二人の恋人がどんな奇跡を働いたか、

この詩に書いて教えてやろうと思う。

 

        まず、僕たちはこよなく忠実に愛し合い、

        しかも、何を愛し、なぜ愛しているのかも分からず、

        性別も何も分からないまま愛したので、

        僕たちの愛は守護天使にも劣らぬものだった。

           出会いと別れの時には、

接吻を交わしたけれども、食事の間にはしなかった。

        近頃の法律によって禁じられた封印の個所を

自然が解放しても、二人の手は触れることはなかった。

これが僕たちの成した奇跡。ああ、だが今はもう、

どんな韻律、言語をもってしても、

彼女の奇跡について語る術を知らない。

 

【訳注】

原題:’The Relic’

 

注:1 マグダラのマリアはキリストに献身的に仕え、恋したと言われ、「それにあやかる者」とはキリストを指すと考えられている。

 

 

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ジョン・ダン全詩集訳 宗教詩