19 熱 病 ジョン・ダンの部屋

 

ああ、死なないでくれ。きみが死ねば

すべての女性を憎むことになる。

きみがその一人であったことを思えば、

きみを賛美することもやめてしまうだろう。

 

だが、きみは死ぬはずがないと思っている。

この世をあとにするということは、死である。

きみがこの世を捨てて逝けば、

この世のすべてがきみの息とともに蒸発する。

 

この世の魂であるきみが逝ってしまえば、

残されたこの世は、きみの抜け殻に過ぎない。

最も美しい女性も幽霊でしかなく、

最も賢明な男も腐った蛆虫でしかない。

 

ああ、百家争鳴の学者たちは、この世を

燃やし尽くす火が何であるかを追及しながら、

それが彼女の熱病であると、誰一人、

気付くだけの智恵もなかったのか。

 

だが、この熱病で彼女が亡ぶはずもなければ、

この苦しみも長く続くはずがない。

なぜなら、このような熱病を長く燃やし続けるには、

大量の腐敗を必要とするからだ。

 

この燃えるような発作は、流星のようなもの、

きみの中にある燃料はすぐに尽きてしまう。

きみの美しさ、きみを成すすべての部分は、

永遠不滅の天球である。

 

きみの中にいつまでも留まることはできないけれど、

きみを捉えていた熱病は、僕の心そのもの。

たとえ一時間であっても、きみの所有者でありたい、

きみ以外のすべてのものを永遠に所有するよりも。

 

 

【訳注】

原題:’A Fever’

 

 

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ジョン・ダン全詩集訳 宗教詩