14 溶 解 ジョン・ダンの部屋

 

彼女は死んだ。人はみな死ねば

元の元素に還元される。

僕たちはお互いにとっての元素だったので、

お互いから成り立っていた。

僕の体が彼女の体を包んでいたとき、

僕を構成する元素は、彼女の体によって

僕の中で肥大し、重荷となって、

僕を養うどころか、窒息させた。

情熱の火、溜息の空気、

涙の水、悲しい絶望の土、

僕を構成するこれらの元素は、

愛に油断してほとんど消滅しかけていたが、

彼女は、僕にとって喪失である死によって回復する。 

そうなれば、僕は惨めに長生きするだけとなるだろう、

僕の火が、情熱の炎を燃料にして増大しないかぎり。

野心的な王様は、

外国を侵略しては、財宝を持ち帰り、

得れば得るほど使い果たし、すぐに破産する。

この(こんなことが言えること自体驚きだが)

この死が、僕の蓄えとともに、

僕の浪費を増大させた。

それで僕の魂はこれまで以上に激しく解き放たれて、

彼女の魂を追い越すだろう。先に放たれた弾丸を、

火薬を多く詰め込まれた後ろの弾丸が、追い抜くように。

 

 

【訳注】

原題:’The Dissolution’

 

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ジョン・ダン全詩集訳 宗教詩