彼女は死んだ。人はみな死ねば
元の元素に還元される。
僕たちはお互いにとっての元素だったので、
お互いから成り立っていた。
僕の体が彼女の体を包んでいたとき、
僕を構成する元素は、彼女の体によって
僕の中で肥大し、重荷となって、
僕を養うどころか、窒息させた。
情熱の火、溜息の空気、
涙の水、悲しい絶望の土、
僕を構成するこれらの元素は、
愛に油断してほとんど消滅しかけていたが、
彼女は、僕にとって喪失である死によって回復する。
そうなれば、僕は惨めに長生きするだけとなるだろう、
僕の火が、情熱の炎を燃料にして増大しないかぎり。
野心的な王様は、
外国を侵略しては、財宝を持ち帰り、
得れば得るほど使い果たし、すぐに破産する。
この(こんなことが言えること自体驚きだが)
この死が、僕の蓄えとともに、
僕の浪費を増大させた。
それで僕の魂はこれまで以上に激しく解き放たれて、
彼女の魂を追い越すだろう。先に放たれた弾丸を、
火薬を多く詰め込まれた後ろの弾丸が、追い抜くように。
【訳注】
原題:’The Dissolution’
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