はるか昔に恋をした亡霊と話をしたい、
愛の神様が生まれる前に死んだ人と。
そのとき、誰よりも愛したというその人が、
嘲る女を愛すほどに身を落としたとは考えられない。
だが、この愛の神様が宿命と定めたからには、
第二の天性、習いとするほかはなく、
僕を愛さぬ女を愛すしかない。
愛を神様に祭り上げた人たちも、そんなつもりではなかったし、
愛の神様も、新米の時にはそんなことはしなかった。
だが、二つの心が等しく焔に触れたとき、
愛の神様、勝手気ままに男と女を
結びつけた。結びつけること、
それだけが彼の仕事だった。愛してくれる
女を愛すのでなければ、愛とは言えない。
でも、近頃の神様はどなたも手を拡げ、
ジュピターも顔負け、特権を増大していなさる。
色狂い、色欲、恋文、称賛、こういった
すべてのものが、愛の神様の領域。
ああ、この暴虐に目が覚めて、
この小僧を神の座から引きずり降ろしていたなら、
愛してくれぬ女を愛すことなどなかったものを。
反逆者よ、無神論者よ、どうして不平を言うのか、
まるで愛が最悪なことをしでかしたとでもいうように。
愛の神様は、愛することを止めることができるし、
女に僕を愛させるという、災厄をふりかけることもできる。
彼女には前から恋人がいるのに、同じ目に遭いたくない。
不実は憎しみより悪いこと。僕が愛している女が、
僕を愛せば、そういうことになる。
【訳注】
原題:’Love’s Deity
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