まったく、きみと僕とは、愛し合うようになるまで、
何をしていたのだろう。それまで乳離れせず、
赤子のように、里で乳を吸っていたのか。(注:1)
それとも、七人のキリスト教徒のように洞窟で鼾をかいていたのか。(注:2)
その通り、この愛の喜び以外は、みな絵空事に過ぎない。
誰か美しい人を見て、
求めて我がものにしたと思っても、それはきみの幻に過ぎなかった。
さあ、僕たちの目覚めた魂よ、おはよう。
互いに見詰め合っても、恐れる心配はない。
愛は、ほかのものに目を移すことなく、
この小さな部屋を、全世界に変える。
新世界発見の旅は航海者に任せ、
地図を拡げて、世界の上に世界を重ね、ほかの人に見せよう。
僕たちは一つの世界を所有し、各々一つの世界を持ち、しかも二人で一つ。
きみの瞳には僕の顔が、僕の目にはきみの顔が映っており、
二つの顔には、誠実で偽りのない心が宿っている。
これに勝る二つの半球がどこにあろう、
極寒の北もなく、陽の沈む西もない。
死は、均等に混合されていないものに起こるもの。
僕たち二人の愛が一つとなり、きみと僕とが
等しく愛し合い、弛むことがなければ、二人にとって死などない。
【訳注】
原題:’Good Morrow’
注:1 「里で乳を吸っていた」というのは、17世紀には、良家の子女は、田舎に送り出されて乳を飲ませる乳母に育てられたという背景がある。
注:2 七人の青年のキリスト教徒が、ローマのデキウス皇帝の迫害(249年)を逃れて、洞窟に潜んで187年間眠っていたという奇跡の話に基づく。
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