空気と天使 ジョン・ダンの部屋

 

二度か三度はおまえを愛したこともあった、

それはまだお前の顔も名前も知らない時だった。

同じように、声となり、形のない炎となって、

天使は僕たちを愛して、崇拝を受ける。

おまえのいるところに行くと、いつも

見えるのは、美しく神々しい無であった。

だが、僕の魂は―魂の子どもである愛は―

肉体の手足となる以外には、何もできなかった。

親より精妙になることなど

愛にできるはずもなく、同じように肉体を帯びるしかない。

だから、おまえが何者で、誰であるかを

愛の女神に命じて尋ねさせた。それでいま、

僕の許しを得て、愛はおまえの体をまとい、

おまえの唇、瞳、額に、愛そのものを固定した。

 

こうして愛を底荷に積み込めば、

もっと安定して進むと思ったが、

賛美の的まで沈めてしまうほどの積み荷で、

愛の小舟を積載過剰にしてしまった。

おまえの髪の毛一本でも

重すぎるのであれば、別の相応しいものを捜さねばなるまい。

なぜなら、無にも、極端なものにも、

光り輝くものの中にも、愛は住みつくことができないのだから。 

だから、天使が、空気ほど純粋ではないまでも、

それでも純粋な空気注:1の顔と翼の姿をもって現れるように、

おまえの愛も僕が愛する天空のようでなくてはならない。

まさにそのような不均衡が、

空気と天使の純粋さの差と同じように、

女の愛と男の愛の間には、常についてまわるのだ。

 

 

【訳注】

原題:’Air and Angels’

 

注:1 「それでも純粋な空気」は、スコラ派の形而上学では、空気は元素の中で最も純粋なものとされていた。

 

 

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ジョン・ダン全詩集訳 宗教詩