21 弔 い ジョン・ダンの部屋

 

わたしに経帷子を着せる人が誰であれ、

わたしの腕を飾る

この繊細な髪の房を傷つけたり、詮索したりしないでほしい。

神秘の象徴に触れてはならない。

それは、わたしの魂の化身であり、

わたしの魂が天に昇って行くとき、

これに支配を任せ、

魂の領土である四肢五体を腐敗から守る副大王。

 

わたしの脳から出て体の隅々まで行きわたる

神経の糸でさえ、

体の各部を結び、五体を一つにまとめることができる。

ならば天に向かって伸び、力と技を備えたこの髪は、

わたしより優れた脳から生まれ出たもの、

さらに優れたことができるはず。彼女がこの髪の輪で、

死刑を宣告され、

手枷を嵌められた囚人のように、わたしを扱うつもりでなければ。

 

彼女の意図がどうであれ、それをわたしと一緒に埋葬してくれ。

わたしは愛の

殉教者。だから、偶像崇拝者を産み出すやも知れぬ、

もしも、これらの遺品が他人の手に渡ったなら。

謙虚な気持で、

一つの魂が成し得るすべてをそれに与えたので、

不敵な心で、

つれないあなたの仕打ちに、あなたの体の一部を葬ろう。

 

 

【訳注】

原題:’The Funeral’

グリアソンによれば、「弔い」、「花」、「桜草」、「聖遺物」の詩は、ダンのパトロンであったマグダレン・ハーバート夫人にあてたものであろうという。ハーバート夫人は、詩人であるエドワード・ハーバート卿とジョージ・ハーバート兄弟の母であり、1596年に未亡人となって、1599年から1601年までオックスフォードに住み、後、ロンドンに移って、1608年に再婚した。彼女はダンより7歳年上であった。

 

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ジョン・ダン全詩集訳 宗教詩