高木登 ホームページへ戻る イタリア大周遊 トップページへ戻る
その1.旅は道連れ
 

勤続30周年のリフレッシュ休暇で、この夏、まとめて休暇を取って、娘と二人で10日間のイタリア旅行のツアーに出かけた。かつてはツアーのパック旅行などは馬鹿にしていたのだが、仕事で海外出張していると、全てレールの上に乗っかってあなた任せに旅する気楽さもたまにはいいものだと思った。

ミラノには仕事でこれまでも何度か足を運んだことはあるが、フィレンツエ、ヴェネツイア、ナポリ、ローマなどというと実に31年ぶりになる。当時はヨーロッパを3ヶ月かけて、ユーレイルパスを使って1日5ドルの生活費で、リュックを背負っての貧乏旅行であった。イタリアも8日間ぐらいかけて回ったと思う。

今回の楽しみは、当時訪問しなかったヴェローナ、シエナ、アッシジなどの古都を訪れることや、修復されたレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」の見学などが盛り込まれていることだった。

ミラノからスタートしてローマまで、バスで各都市を巡る走行距離は1200キロを超える。まさに日本列島を縦断する距離数である。しかも今年のヨーロッパは6月から30度を超す異常気象で、イタリアに着いた前日は41度までなっていたという。着いた日も35度を超えていた。その暑さの中での観光旅行は、気力と体力の勝負といってもいいぐらいであった。テレビを見ていると、フランスでは毎日暑さのために死者が増えて、着いた日には死者2千人といっていたのが、帰る前日になると1万人を超えていた。

パックツアーは、個人旅行とはまた違った経験をすることができる。

イタリアは観光国だけあって、それぞれの遺跡や都市の保存に力を入れているのはもちろんのことであるが、観光バスでの観光地乗り入れには入域料なるものがあって、これが実に高いものらしい。例えばフィレンツエの入域料は日本円で約3万円ほどする。私達のツアーは33名だったので、一人当たりにすると千円弱ということになる。ただ、美術館などの入場料などは文化を伝え、学ぶという精神から安い料金になっている。この入域料はミラノなど一部の都市を除いて全ての観光都市で徴収される。

また全ての観光地で、その地のライセンスを持ったガイドに案内してもらう必要がある。ツアーの添乗員は一切観光地でのガイドをしてはならず、建物に指を指して話をするだけでも罰金の対象になる。私達の添乗員はトイレの場所を指で指して説明しただけでつかまり、その言い訳をするのに大変な目にあったことがあるという。

しかしこのガイドの説明が大変勉強になり、大いに知識の窓を開いてくれる。ガイドのことについてはまた後述することにするが、個人旅行では味わえない経験を多くした。

全行程をバスで移動するので、当然ツアーの仲間とは寝る時間以外は四六時中行動を共にする。初めはお互い気心も知れず、かなり緊張した関係にあるが、毎日の食事を共にしているうちに、自ずと緊張が溶け合って心が通うようになる。中には夫婦だろうか、親子(母親と息子)だろうかと、誰もが訝るかなり見分けのつかないカップルがいたりして、その謎が溶けるまでかなり時間がかかった(直接問い掛けるわけにもいかないから)。一番多い組み合わせは熟年のカップルで、あとは新婚のカップルが二組、女性同士の連れが二組、親子のカップルが我が家ともう一組(母親と中学生の女の子)。そして家族5人が揃ってという豪勢な組と、男性一人、若い女性一人という参加もあってバラエテイに富んだツアー仲間であった。

食事は、大体決まった仲間と同席をするようになっていくのが常である。互いに自己紹介して名前を言い合うわけではないが、自然に覚えて、帰るまでには7割方の名前を覚えた。写真の撮り合いなどで、住所を交換する人たちもでてきて、お互い別れるのがちょっぴり淋しくなる。そういう旅も、時にはいいものだと思う。互いに気まずい思いもせず、楽しい思いだけを残して別れることができるのが何よりである。

『ロミオとジュリエット』のヴェローナ ミケランジェロはシェイクスピアが生まれた年に死んだ 前のページへ