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 『ヴェニスの商人』のヴェネツイア
 

19世紀後半にヴィットリオ・エマヌエレ2世によって統一されるまで、イタリアは小国に分裂していた。シェイクスピアの時代には、ミラノ公国、フィレンツイエ共和国、ヴェネツイア共和国、(ローマ)教皇領、そしてナポリ王国の5つが勢力を持っていた。

現代のヴェローナとヴェネツイアは、イタリア20州のうちのヴェネト州に属している。

シェイクスピアについて言えば、ヴェローナが『ロミオとジュリエット』なら、ヴェネツイアは『ヴェニスの商人』の作品で知られる。


「世間は世間、大したもんじゃない、グラシアーノ、

つまり舞台だ、誰もが一役演じなきゃならん、

私の役はふさぎの虫だ」


ヴェニスの商人アントーニオの憂鬱は、ハムレットの憂鬱の先取りであり、「世界は舞台」は、『お気に召すまま』の皮肉屋で、世間を斜めに見るジェークイーズに発展される。

私達がヴェネツイアを訪れた日は、8月15日、つまり「聖母被昇天祭」に当たっており、常でさえ観光客で溢れるサン・マルコ広場は朝から多くの人出で賑わっていた。

この日のガイドは、『ヴェニスの商人』に敬意を払ったわけでもないだろうが、アントーニオという日本語に堪能なヴェネツイア人。単に日本語が上手と言うだけでなく、日本の歴史から、今日の日本の時事問題や、芸能ニュースに至るまで、実に詳しい。生粋のヴェネツイア人と言いながら、奥さんは彼曰く外国人というので、江戸っ子も三代続かないことになる。彼のバンビーノは、13歳で日本語を含めて3ヶ国語を喋るそうだ。

アントーニオの説明は、日本に関する知識を織り交ぜて対比させて説明してくれるので、聞いていて非常に分かりやすい。たとえば、サン・マルコ広場にあるコの字型の建物の説明をするのに、右側の建物(旧政庁)は平安時代に建てられたもので、左側(新政庁)は室町時代のものである、といった具合である。

新政庁側にあるコーヒー店は、世界で一番古い歴史を誇るけれども、値段も高くコーヒー一杯が1300円。それと張り合うようにして向かい側旧政庁側にあるコーヒー店も次に古いが、値段は少しだけ安く1000円。アントーニオ曰く、古い方のコーヒー店で雰囲気だけ味わって、コーヒーは安い方で飲むのをお勧め。

ユーロ通貨になって痛感したのが、イタリアのリラの時代に較べての割高感である。しかも最近のユーロ高で、交換レートが140円だと一層高く感じてならない。

ヴェネツイアと言えばやはりゴンドラ。ゴンドラもかつては庶民の足であったのが、現代では観光客向けだけの使命となっている。ゴンドラの船頭さんも免許制。イタリアではガイドを含めてすべてが免許制となっている。面白いのは車の免許でも一旦取ってしまえば更新というものがないので、免許証の写真は取った時のそのままの写真。18歳で取ったとして、その人が60歳になっていれば、写真と当の本人はかなり違っていると思うのだが・・・

パック・ツアーに含まれるゴンドラに乗って、運河の町並み廻りを楽しんだ。

『ヴェニスの商人』の場面でシャイロックの台詞に出てくる取引所(リアルト)のあったリアルト橋は、31年前初めてヴェネツイアを訪れた時にも増して賑わっていたのが懐かしさを深めた。

この日のヴェネツイアも暑かった。今回の旅行は、毎日の感想が、ただ暑い、暑い、の連続であった。

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