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イタリアといえば、シェイクスピアでまず思い出すのは、『ロミオとジュリエット』。その舞台であるヴェローナの町で続いて思い出されるのは、『ヴェローナの二紳士』のタイトル。『じゃじゃ馬ならし』も舞台はイタリアで、ヴェローナやピサの名前などが出てくる。シェイクスピア自身は行ったこともないが、イタリアとの縁は深い。シェイクスピアとイタリアという視点で旅行するのも一つの楽しみであった。

今度のイタリア旅行に出かける前に、書店で探し物をしていて、偶然に目に飛び込んできた本がある。それはまさに飛び込んできたとしか言いようのない出会いである。本との出会いは得てしてそんなものであるが、『リチャード三世「殺人」事件』との出会いがそれであった。

エリザベス・ピーターズの『リチャード三世「殺人」事件』が出版されたのは今から四半世紀前の1974年であるが、安野玲訳で扶桑社ミステリー文庫が出たのが今年の2月となっていた。極悪人のレッテルを貼られるリチャード三世の無実を信じるリカ−デイアン愛好家たち。その事実を証明するエリザベス・オブ・ヨークの手紙が見つかったという。リカーデイアンたちは、当時の衣装でそれぞれの人物に扮して、その手紙の披露に集まる。そこに謎の襲撃事件が続けて発生するミステリー。この本自体の面白さより、今から半世紀前の1951年にジョセフィン・テイによって書かれた<寝台探偵>ミステリー小説『時の娘』へのオマージュとして書かれたものであるという解説に興味を覚えた。

そこで今度は自ら捜し求めて、その『時の娘』(ハヤカワ文庫)を八重洲のブックセンターで見つけ出した。この本が実に面白かった。結局、往きの飛行機の中で、『リチャード三世「殺人」事件』と『時の娘』の2冊を読み終えてしまった。『時の娘』はリチャード三世についての歴史の裏側にある事実を探り出そうとする推理小説である。

ということで、今度のイタリア旅行は、僕にとってリチャード三世で始まったと言える。

その10日間のイタリア旅行から帰ってすぐに買った本が、『「人類史上初のツアー旅行体験記」ローマ人が歩いた地中海』(トニー・ペロテット著・仁木めぐみ訳、2003年7月30日初版発行・光文社)、塩野七生著『マキャヴェリ語録』(2003年7月30日、新潮社刊)、それに中公文庫で池田廉訳のマキャヴェリ著『君主論』。『君主論』は岩波文庫の河島英昭訳で一度読んでいるのだが、別の訳でも読んでみたくなったので、ついでに衝動買い。

『ローマ人が歩いた地中海』は、「目から鱗」の類である。曰く、

「パッケージ・ツアーなんかに参加するのはぞっとするという人も多い。しかし・・・現代の団体旅行は俗っぽいように見えて、実はローマ時代からの観光旅行の伝統を一番純粋に伝えているのだ。古代の観光客にとって、旅行するそもそもの目的は、みんなが行くところに行き、みんなが見るものを見て、みんなと同じ感想を持つことにあった・・・観光客とは巡礼のようなものだった」

この本の著者も、名所旧跡にはどちらかというと敬遠して、秘境や人の歩かないところを求めて旅をしていたのだが、古代ローマの旅行ブームについて調べていて、たくさんのローマ人たちが異国の名所を見るための観光旅行に出ていたことが分かって、その跡をたどることを決意して地中海の旅に出かけた、その旅行記がこの本である。

ということで、今回の旅の終わりを締め括るのに最もふさわしい本を偶然見つけ出したことになる。パッケージ・ツアーについての大いなる言い訳を代弁してくれる本である。

このようにして僕の旅は始まり、そして終ったのだが、中味はこれからである。

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