シェイクスピアのソネット
 

153 焼け棒杭に火がつく

 

キューピッドが傍らに松明を置いて、眠りこけた。

ダイアナの侍女がこれを好機と見定めて、

すばやく、愛の点火の炎を

近くの谷間の冷たい泉に浸した。

 

泉は、その愛の神の聖なる炎から

永遠に燃え尽きることのない熱を奪い、

湧き立つ温泉となって、今ではそこで人々が

難病奇病の治療の効果を試す。

 

だが、私の恋人の眼で愛の神の松明は新たな火を得、

キューピッドは喜び勇んで私の胸に火をつけた。

おかげで私は病にかかり、温泉の助けを求めて、

まっしぐら、あわれ病の訪問者、

 

  でも、治療はかなわず、それもそのはず、私を癒す温泉は、

  キューピッドが新たな火種を得た私の恋人の眼にあるのだから。

 

 

【私の鑑賞】

一旦は愛すのをやめたと思っても、彼女の視線を浴びるとまたも愛の火がつく。

154番と対になっているソネット。