シェイクスピアのソネット
 

152 誓い破り

 

私が愛の誓いを破ったのをおまえは知っている。

だが、おまえは二度まで私に対して愛の誓いを破ったのだ。

まず閨房の誓いを破り、次に新たな誓約を引き裂いた、

新たな愛を産んでは新たな憎しみを誓いながら。

 

だが、どうして二度の誓いの破約でおまえを責められよう、

私は二十度(たび)も破ったというのに。私こそ約束破りの張本人、

私の誓いはすべておまえを欺く約束に過ぎない、

おまえのせいで私の誠実な約束はみな失われた。

 

なぜなら、私が固く誓ったことは、おまえの心からの親切、

おまえの愛、おまえの誠実、おまえの貞節への、数々の誓いであった、

そして、おまえを輝かせるため盲目の眼に

見えるものを逆であると誓わせた。

 

  私がおまえを美しいと誓った、その眼はいっそう嘘つき、

  真実に背いてそんな汚い嘘を誓うのだから。

 

 

【私の鑑賞】

詩人の誓い破りとは何だったのか?(注釈によると自伝的な解釈もあるようだがここではふれない)

女の二度の誓いとは何だったのか?

詩人の二十度(数多く)の誓いとは詩人の女性遍歴であり、女の二度の誓いは、彼女の夫との閨房の誓いと、詩人との愛の誓いということが考えられる。

新たな愛と憎しみは、詩人の愛した青年を女が愛したことと考えられる。

だが、詩人の心の底流をなす、美しくもない女に溺れてしまった詩人自身への自嘲を感じる。『マクベス』の魔女の台詞、「きれいは汚いで、汚いはきれい」を思い出させる。