シェイクスピアのソネット
 

151 愛に分別はなく

 

愛の神は分別が何たるかを知るには幼すぎる、

だが、分別が愛から生まれるということを誰が知らないだろうか。

だから、やさしい顔をして騙す人よ、私の過ちを責めれば、

私が犯した過ちの罪は、やさしいおまえ自身のものだと知れよう。

おまえが私を裏切るので、私も裏切って

私の高貴な魂を貪欲な肉体の欲望に委ねるのだ。

私の魂が私の肉体に言うには、肉体は

愛に勝利すると。肉欲は理性をそれ以上待たず、

 

おまえの名を聞けば立ち上がり、おまえにまっしぐら、

肉欲の戦利品、獲物に得意満面となる。

肉体はおまえの惨めな従僕となることに満足し、

おまえの情事に加担し、おまえの傍らに倒れる。

 

  私が分別を欠いていると思わないでくれ、私が

  彼女を「恋人」と呼び、その愛ゆえに立ち上がって倒れようと。

 

 

【私の鑑賞】

赤裸々なまで露骨に肉欲、性欲を表現し、詩人は自制心もなく、理性、分別も放り出す。

詩人は本能のおもむくままに性欲の成就を語る。

精神的な愛より、肉体の愛の勝利を謳っているように見えるが、そこに何か一抹のさみしさを感じる。