シェイクスピアのソネット
 

150 魔 力

 

ああ、どんな力からこの強い力を得て

私の心を弱点で支配し

真実を見る眼に嘘だと言い

昼を輝かせるのは光ではないと誓うのか

 

醜いものを美しいとする力をどこで手に入れ

おまえの塵芥のような行為に

そのような力や技巧の権限を与えて

私の心の中で、おまえの最悪なものが最善なものに勝るとするのか

 

誰がおまえに私がいっそうおまえを愛させる方法を教えたのか

憎むべき原因を見聞きすればするほどに

ああ、私は他人が忌み嫌うものを愛するけれど

おまえは他人と一緒になってそんな私を嫌うべきではない

 

  おまえの価値の無さが私に恋心を起こさせたとすれば

  私はおまえにもっと愛されて当然だ

 

 

【私の鑑賞】

欠点ゆえに詩人の心を支配する、そんな魔力はどこから生まれてくるのか。

恋をした者には分かるはずだが、好きになると人はその相手の欠点を一方で自分の恋を打ち消す材料にしようとするが、結果的にその欠点ゆえにいっそう愛の深みにはまってしまう。そういう自分が嫌になりながらも愛さずにはいられない二律背反の恋に苦しむ。

女の欠点が詩人に恋心をおこさせるのだから、詩人はそのことを逆手にしてもっと愛されてしかるべきだと主張する。