シェイクスピアのソネット
 

149 私は盲目

 

ああ、残酷な人よ、私がおまえを愛していないと言えるのか

己の意に反しておまえの味方をしているのに。

おまえのことを思っていないとでもいうのか

暴虐きわまるおまえのために我を忘れている私なのに。

 

おまえを憎む者を、私は自分の味方だと呼んでいるか。

おまえに眉をひそめる者にへつらっているか。

いや、おまえが私に眉をひそめれば、私は

たちまち悲しみで我が身に恨みを晴らさずにはいられない。

 

私の中にどんな美点があるというのか

おまえに仕えることを蔑むことを誇りに思うような美点が。

私の最高の美点がおまえの欠点を敬うのは

おまえの眼の動きに支配されているからだ。

 

  だが、愛する人よ、憎み続けよ。おまえの性根はわかった。

  おまえは見える人だけを愛す。だが、私は盲目だ。

 

 

【私の鑑賞】

詩人は反語的に彼女への愛を繰り返す。

反語でしか語りえない愛は虚しい。

詩人が彼女の欠点に眼をつむるのは、彼女の眼の動きに左右されるからだが、彼女はそんな卑下した詩人を見下す。

詩人は、そんな彼女の態度に性根を据え、開き直ったように見える。