ああ、愛は、私の頭に何という眼を嵌めこんだのか
眼の見るものが真実の姿と一致しないとは
真実を見るのなら、私の判断力はどこに逃げたのか
眼が正しく見ても判断を誤るとは
私の不実な眼が溺愛するあの女が美しいのなら
世間の者がそうではないと言うのはどういうわけだ
そうでないのなら、愛がはっきり示す通り
愛の眼は世間一般の眼同様にあてにはならない
いや、どうして真実であろう、ああ、愛の眼はどうしてあてになろうか
愛の眼は、不眠と涙で悩まされているというのに
だから驚くにはあたらない、私が見誤るのも
太陽だって空が晴れるまでは見えないのだ
ああ、狡猾な愛よ、おまえが涙で私を暗ませるのは
よく見える眼におまえの欠点を見つけさせないようにするためだ
【私の鑑賞】
自分の眼が正しいのか、それとも世間一般の眼がおかしいのか。
詩人が彼女を美しいと思っているのは、愛のキューピットのせいで盲目となっているせいか。詩人が見誤るのは、彼女のせいで涙にくれて眼が曇ってしまっているから。
自分の心に忠実になれず、世間の世評に心惑わされている。
恋の思いはいつも紆余曲折。詩人の眼は曇って晴れることがない。