シェイクスピアのソネット
 

147 恋の病に薬なし

 

私の恋は熱病のように、やむことなく

病を糧にその思いは募るばかり

病を留める恋の思いを食い物にし

気まぐれで病的な食欲を満たしている

 

私の恋の病の医者である理性は

処方箋を守らない私に腹を立て

私を見捨てた、それで絶望した私は

医術を拒む欲望は死だと知った

 

いまや、治療も及ばず、理性も敵わず

絶えない不安で気も狂わんばかり

私の考えることや話すことも狂人のそれと同じ

脈絡もない、虚しいたわごとに過ぎない

 

  おまえを美しいと誓言し、輝くばかりと思ったが

  おまえは、地獄のような暗黒、夜の暗闇のようだ

 

 

【私の鑑賞】

詩人は断ち難い恋の思いに苦しむ。いまや理性の力も及ばず、その思いを止める術もない。

彼女を輝くばかりの美しさと称賛した詩人も、今では彼女のことを地獄のような暗い存在だとの自らを呪う。

断ち難い恋の病に諺二つ。

「お医者様でも草津の湯でも惚れた病は治りゃせぬ」

「あはれ我が恋の病ぞ、薬なき浮名ばかりを断ち物にして」(「職人尽歌合」)