愛の女神が手ずから拵えた唇が
「私は嫌い」という言葉を吐きだした
彼女のせいでやつれた私に向かって
だが私の悲しむ姿を見ると
たちまち彼女の心に憐みの情が生まれ
いつもは甘く
優しいことを口にするあの舌を叱りつけ
改めて挨拶の仕方を教えた
「私は嫌い」の結びの言葉を変えて
夜が明けた後の昼のように穏やかな言葉を続けた
そして夜は、悪魔のように
天国から地獄へと飛び去った
彼女は、「私は嫌い」から嫌いをうち捨てて
「あなたのことじゃない」と言って私の命を救った
【私の鑑賞】
一連のダ―クレディ・シリーズとは調子が異なっている。
一説にはこの詩はシェイクスピアの作品ではないとするものもあるが、アンドルー・ガーは「シェイクスピアの初期の詩」で、この詩がシェイクスピアの若い時の作品でアン・ハザウェイへの求婚の詩であることを提唱しているが、そうだとすればダーク・レディのシリーズには場違いな気もする。