シェイクスピアのソネット
 

142 自業自得

 

愛が私の罪で、憎しみがおまえの美徳

私の罪への憎しみは、罪深い恋ゆえ

ああ、私の立場をおまえのと較べるだけで

責めるには値しないと分かるだろうに

 

そうであっても、おまえの口から聞きたくない

その唇は深紅の装いを汚しては

私の唇同様、いくたびも愛の偽証文に刻印し

他人のベッドの間代を奪い取ってきた

 

私がおまえを愛すのを許されてもいいはずだ、おまえが

私の眼がおまえに迫るように、おまえの眼が口説く相手を愛すなら

おまえの心に憐みの心を植え付けてくれ、それが育てば

おまえの憐みも人の憐れむに足ることとなる

 

  おまえが拒むものを得ようと求めても

  拒まれるのは自業自得で必然だ

 

 

【私の鑑賞】

詩人の罪とは、姦淫の罪。

詩人は彼女と通じたことで彼女に憎まれる。だが立場を換えれば彼女こそ他の女性からその権利たる夫のベッドを奪っている。

詩人の愛は彼女の愛となんら変わらないはず。だから彼女に憐みの心さえあれば、詩人の彼女への恋も許されるはず。憐みを示さなければ彼女がそれを必要とする時、憐みを受けることができないだろうと言って、詩人は彼女の心に憐みの心を植え付けることを願う。

「情けは人のためならず」、情けを拒む者は自分もそれを得ることができない。