盲目の道化者、愛の神よ、おまえは私の眼に何ということをしてくれたのだ
眼は見ていても何を見ているのか分かっていない
眼は美とは何か知っていて、それがあるところを見ても
最悪なものを最善であると思いこむ
偏見で曇って堕落した眼が
男という男がみな停泊する湾に碇をおろすからとて
どうしておまえは眼の欺瞞から釣針をこしらえ
私の心の判断をひっかけようとするのか
どうして私の心はそれを私有地と考えるのか
それが広く世間の共有地であると分かっているのに
それとも私の眼は、それを見ていながら、それではないと言って
そのような醜い顔に美しい真実を着せるのか
私の心と眼はこの正しい真実に関して誤っており
今はこの虚偽という疫病にとり憑かれている
【私の鑑賞】
愛の心理とは不思議なもの、自分が愛するものを最高だと思う反面、なんでこんな女を好きになったのだと自分自身に嫌悪の情を抱く。
彼女は、すべての男性に愛想よく、誰に対しても懇ろとなり、自分ひとりのものではないと分かっていても、愛さざるを得ない。
愛とは偽りの疫病の病のようなもの、詩人はその疫病にとり憑かれた自分を自嘲する。