シェイクスピアのソネット
 

136 せめて名前だけでも

 

あなたの心が私の馴れ馴れしさを咎めるのなら

その盲目の心に私があなたのウィルだと言いなさい

あなたの心も知っての通り、「こころ」は受け入れられている

愛しい人よ、そのくらいは私の愛の願いを満たして下さい

 

ウィルはあなたのお宝を満たします

そう、私の「意」もその一つとし、数多の「意」でそれを満たしなさい

大きな器には一という数字などものの数ではない

ということが真理として容易に証明される

 

だから私のことなどものの数に入れないで下さい

あなたの宝庫の勘定の一つに私を入れねばならぬとしても

私など取るに足らぬものと思ってかまわない、あなたにとって

私のことを愛しいものであると思ってくれるなら

 

  私の名前だけでもあなたの恋人とし、いつも愛して下さい

  そうすれば私を愛すことになる、私の名前はウィルだから

 

 

【私の鑑賞】

ダーク・レディには幾人ものウィリアムという名前の恋人がいる。

彼女の夫の名前もウィルであり、詩人のことで彼女の良心がとがめるようであれば、詩人の名前もウィルだから、夫のウィルであると言い訳して、詩人の愛(性欲)を満たしてほしいと訴える。

「一」という数字は数のうちに数えられていない。だから大勢のウィルの中にひとりのウィルを加えたところで、数が増えるわけでもない。

せめて私の名前だけでも愛してくれれば、それだけで私はあなたの恋人となることができるというのが表面上の意味だが、彼女が欲望に従えば名前の意味するところから必然的に詩人の欲望が達成されることなる。