私の女の眼は太陽とは較べものにならない
珊瑚の方が彼女の唇の赤よりはるかに紅い
雪の白さに較べれば、彼女の胸は黒そのもの
髪が針金とすれば、黒い針金が彼女の頭に生えている
紅白に綾なす薔薇を見たことがあるが
彼女の頬にはそのような薔薇は見られない
ある種の香水にはもっとよい香りがある
私の女が吐き出す口臭に較べれば
彼女が話すのを聞くのは好きだが
音楽の方がはるかに心地よい音を出すのを知っている
女神の歩く姿を見たことはないが
私の女が歩くときは大地を踏みつける
それでも私は、私の恋人が類まれだと信じている
偽りの比較で賞賛される女と劣らぬほどに
【私の鑑賞】
女性の美を称えるのに、貴女は太陽だ、月だと崇め、薔薇のような頬、雪のように白い肌と称賛する。
吐く息は薔薇の香りのように芳しく、歩く姿は天女のようと美しく譬えるのが世の常。
詩人はそのような偽りの比較をしないことで、その類まれな美しさを強調する。
そこに一種の詩人のシニシズムを感じる。