シェイクスピアのソネット
 

129 天国と地獄

 

恥ずべき浪費である精気の消耗は

情欲を満たす行為。行為に至るまで情欲は

偽証、殺人、流血と、多くの罪をなし

野蛮、過酷、残忍、無慈悲で、信頼が置けない

 

享楽のあとにはたちまち嫌悪の情

分別忘れて追い求め、得ればたちまち

分別忘れて呑みこんだ餌を憎む

人を狂わすために仕掛けた罠だと気づき

 

狂気しては追い求め、得ては狂気するのは

得るも、追い求めるも極端だから

体験するまでは至上の喜び、終わってみれば嫌悪の情

前には期待の喜び、後には一瞬の夢と果てる

 

  そんなことは誰もが百も承知、だが誰も

  この地獄に導く極楽を避ける術を知らない

 

 

【私の鑑賞】

関係をもつまではその期待に胸躍らせて、必死で女を追いまわす。

だが一旦情欲が満たされると、後に残るのは嫌悪の情でしかない。

性欲と赤裸々な男と女の関係―

二人の関係が通常でないために、性欲の成就も達成感より、虚しさだけが支配している。