私の音楽よ、あなたは
祝福された木片の上で楽を奏で、あなたの美しい指で
木片の動きが音を響かせ、あなたが
私の耳を魅惑する弦の和音をたおやかに操るとき
私は、軽やかに弾む鍵盤の鍵が
あなたの柔らかな掌に口づけするのを見てはいくたびも羨み
収穫に与るべき私の哀れな唇は
あなたのそばで木片の大胆な振舞いに赤面して見守るばかり
そのように触れてもらえるものなら唇は喜んで
踊る木片と立場をかえたいと望むだろう
あなたの指は鍵盤の上をしとやかな足取りで歩み
生きている唇より生命のない木片を幸せにしているのだから
厚かましくも鍵盤はこのような幸せに浴しているのだから
鍵にはあなたの指を、私にはあなたの口づけを与えて下さい
【私の鑑賞】
詩人は恋人が楽器(ヴァージナル)を弾いているのを傍らで聴いている。
彼女の美しい指が鍵に触れ、その上を躍動するのを見て、あたかも指が鍵と口づけしているかのような羨望感を抱く。
鍵盤の鍵はあなたの指と口づけをかわしているのだから、恋人よ、私にはあなたの唇を、と求める。