シェイクスピアのソネット
 

128 楽を奏でる貴女へ

 

私の音楽よ、あなたは

祝福された木片の上で楽を奏で、あなたの美しい指で

木片の動きが音を響かせ、あなたが

私の耳を魅惑する弦の和音をたおやかに操るとき

 

私は、軽やかに弾む鍵盤の鍵が

あなたの柔らかな掌に口づけするのを見てはいくたびも羨み

収穫に与るべき私の哀れな唇は

あなたのそばで木片の大胆な振舞いに赤面して見守るばかり

 

そのように触れてもらえるものなら唇は喜んで

踊る木片と立場をかえたいと望むだろう

あなたの指は鍵盤の上をしとやかな足取りで歩み

生きている唇より生命のない木片を幸せにしているのだから

 

  厚かましくも鍵盤はこのような幸せに浴しているのだから

  鍵にはあなたの指を、私にはあなたの口づけを与えて下さい

 

 

【私の鑑賞】

詩人は恋人が楽器(ヴァージナル)を弾いているのを傍らで聴いている。

彼女の美しい指が鍵に触れ、その上を躍動するのを見て、あたかも指が鍵と口づけしているかのような羨望感を抱く。

鍵盤の鍵はあなたの指と口づけをかわしているのだから、恋人よ、私にはあなたの唇を、と求める。