君の贈り物、君の覚え書き帳は私の頭の中に
不滅の記憶力でしっかりと刻まれ、
徒な文字の羅列を超越し
時を超え、永遠にとどまる
少なくとも頭と心とが
その自在する本来の機能を有する限り
君の姿を忘却という滅却に委ねるまで
君の記録が失われることはない
貧弱な記憶力はそれほど多く記憶できないので
君の貴い愛を勘定する割符を必要としない
だから私は君の覚え書き帳を放り出し、かわりに
君をもっと収めるこの記憶力を信頼したのだ
君を思い出すために補助手段を必要とするなら
私が忘れっぽいということになるではないか
【私の鑑賞】
当初詩人は、青年の美貌を残し伝えるために青年に結婚を勧め、子孫を残すことを奨励し、次には彼の美しさを永遠に伝えるために詩という手段を用いた。
しかし今では詩人はそういった形あるものに頼らず、記憶の中に青年の思い出を留めようとする。
詩という記憶のための補助手段を用いることは詩人の物忘れのよいことを意味することになるとして、詩人は今それを放棄しようとする。
それは青年の思い出を詩人だけの記憶に留めることをも意味し、詩人が青年を永遠に独占できることをも意味する。