シェイクスピアのソネット
 

118 薬も過ぎれば毒となる

 

いうなれば食欲をそそるのに

味覚を刺激する香辛料をもってするようなもの。

また症状の表れていない病を未然に防ぐのに

予防の下剤を飲んで病に困ずるようなものでもある。

 

同様に、飽くことなく君の甘美さに満ち足りているので

食膳をスパイスで効かすのだ。

それに安逸に飽いたので、本当の病気になる前に

病気にかかるのがふさわしいと思ったのだ。

 

こうして恋の作戦は、病を予防すべくして

本物の病気になってしまった。

健康な状態から薬を必要とすることになったが

健康が過ぎて病気で治したいと思ったが故だった。

 

  だがこのことから学んだのは、この教訓が真実だということ

  つまり君に飽いた者には薬も毒となるということだ。

 

 

【私の鑑賞】

詩人の青年に対する不実の抗弁、言い訳が続く。

味覚を増すために香辛料を用いるように、青年の愛の不変と愛の力を試すために詩人は青年から遠ざかって悪友と交わったが、そのために詩人は青年の愛を失ってしまった。

こうして詩人の青年に対する恋の作戦は失敗に帰した。

失った青年の愛は取り返せるであろうか、続きが楽しみな詩である。