シェイクスピアのソネット
 

117 弁護の抗告

 

このように私を告発してほしい。つまり君の

大いなる美点に払うべき敬意をまったく怠り

君の最も高貴な愛に訴えることを忘れたことを。

私はその愛の絆に日々縛られているというのに。

 

また私は君の知らない人とたびたび付き合っては

君が高価な代価を払って得た私のための時間を無駄にした。

また八方美人よろしく誰に対しても帆を挙げて進み

君の眼の届く処から遠ざかってしまった。

 

私の故意の罪や過失による罪を記録し

確かな事実に憶測を付け加えてもかまわない。

君の勘気にふれるようなことがあっても

憎しみで私を射るようなことはしないでほしい。

 

  私の上訴は君の変わらぬ愛の強さを

  試そうと努力したと言っているのだから。

 

 

【私の鑑賞】

詩人は法律用語を持ち出しては自分を責める一方で、その弁護の抗弁をする。

告発の内容は、詩人が青年の愛の絆に縛られているにもかかわらず、八方美人的に誰にも愛想をまき、はては青年とも遠ざかってしまったことである。

しかし詩人は青年に対して、自分の行為が勘気にふれるようなことであっても、それを憎しみの眼で見ないでほしいという。

詩人がそんな行為に及んだのは、青年の愛の不変と愛の力を試そうとしただけであると抗弁する。