シェイクスピアのソネット
 

116 愛は変わらない

 

まことの心同士の結婚には

障害などありはしない。心変わりして変化したり

変節者に同調して曲げるような愛は

真の愛ではない。

 

否とよ、愛は確固として立つ燈台、

嵐を見張り、揺らぐこともない。

愛はさまよう船にとっての北極星、

その高さは測定できても、その価値は測り知れない。

 

愛は「時」の道化ではない、たとえ薔薇色の唇や頬が

「時」の鎌の手のうちにあろうとも。

愛は過ぎゆく日月とともに変わることなく

最後の審判の日まで続く。

 

  それが誤りであり、私の言ったことが間違っておれば

  私は真実を書かなかったことになり、この世に愛した男などいない。

 

 

【私の鑑賞】

具体的な愛の対象たる青年への訴えから詩人はだんだん観念的な世界、哲学的思考の世界へと移り、真実の愛の不滅を謳っている。

真実の愛とは、真の愛、真の愛とは相手を裏切らない、心変わりを決してしない愛である。

愛の大きさは測り知れないと詩人が語る時、アントニーとクレオパトラの二人の会話を思い出す。

 

クレオパトラ それが愛なら、どのくらいの大きさか知りたいわ。

アントニー どのくらいと言えるような愛は卑しい愛にすぎぬ。

クレオパトラ でもあなたの愛の世界をその涯まで見きわめたい。

アントニー それを見きわめれば新しい天地をみることになろう。(小田島雄志訳)