97 君なくば冬の思い

 

君と離れていたのは春もたけなわ

彩色鮮やかに着飾った四月の時

あらゆるものに青春の精気が注がれ

憂鬱な顔をした豊耕神サトルヌスも笑っては、一緒になって踊った。

 

だが小鳥の楽しいさえずりにも

色とりどりの花の甘い香りにも

夏の悦びの物語を語る気にもなれず

萌え出ずる大地から花を摘む気にもなれなかった。

 

私は白百合の白さを愛でることもなく

薔薇の花の深紅を称えることもなかった

それらはただ香りよく、見目麗しいだけ

君の模造品でしかなく、君こそすべての鑑だった。

 

  季節はいつも冬に思えた。君がいないので

  花を君の面影と見ては花と戯れた。

 

 

【私の鑑賞】

青年と別れていたのは春の季節だった。

しかし青年の不在の春は、詩人にとっては冬と同じだった。

薫り高く色鮮やかな花を楽しむこともできなければ、摘み採って手にする気にもなれなかった。

それらは青年の模造品でしかなく、青年こそそれらのお手本であった。

青年の不在の間、詩人は花に青年の面影を見てはその花と戯れて時を過ごした。