97 君なくば冬の思い

 

過ぎゆく年の悦びであった君から

離れて過ごす私はまるで冬のよう。

凍える思いで暗い日々を過ごす

老いたる十二月のなんと荒涼たることか。

 

君と離れていたその時節は夏だった、

実りの秋が豊かな収穫に身を膨らませ

春の好色が産み出す実りのさまは

夫を亡くした未亡人が孕んだ子宮のよう。

 

だがこの豊かな実りも私が思うには

父無し子か、孤児のはかない定めでしかない。

夏も、夏の喜びも君に仕える従者であり

君がいなければ、小鳥たちさえも沈黙したまま。

 

  たとえ小鳥たちが歌おうとも、暗い調子なので

  木々の葉は、冬が近いのを恐れて青ざめている。

 

【私の鑑賞】

君と出会った初夏は、実りの秋を約束するはずであった。

だが、悦びである君との出会いも夏の間の一瞬の出来事でしかなかった。

実りの秋を一人で迎えるのは、夫を亡くした後に子供ができるようなもの。

悦びであるはずの子供も、父無し子として生まれてくるしかない虚しさ。

君がいない時は冬の季節のようなもの。

小鳥も歌わず、木々の葉も青ざめ、あたり一面荒涼たる風景で私は一人凍えて震えている。