94 石の表情

 

人を傷つける力はあっても、傷つけることなく、

大いにその気は見せても、実際にはやらない、

人を動かす力はあっても、自身は石のように、

冷たく、動じることなく、誘惑にも容易に乗らない。

 

そういう人は天の恵みを正当に授かり、

自然の豊かな恵みを浪費から守る。

そういう人は自分の表情を自由に操るが、

そうでない人は、そういう人の執事でしかない。

 

夏の花が夏に美しいのは、

夏にのみ生き夏に死ぬから。

だがその花も退廃の病を得れば、

最も卑しい雑草にもその品位は劣る。

 

  どんなに美しいものも行為しだいで最も酸いものとなる。

  腐敗した百合は雑草よりはるかにひどい臭いがする。

 

 

【私の鑑賞】

内に偽りの心を秘めていても表には出さない。

青年の表情は石のように動かない。

他人を動じさせても、自分は誘いの手にも乗らない。

そういう人を前にすれば、並みの人はそういう人の執事のように操られるものでしかない。

夏の花が美しいのは夏の日の間だけ。

時が来れば美しい花も朽ち果て、雑草よりいやな臭いを放つようになる。

純粋無垢の百合の花も、朽ちればその臭いは雑草よりひどい臭いがするものだ。

青年が表向き誠実に見えても内実は偽りの心であることを詩人は繰り返し謳う。