けれども私からこっそり逃げ出す最悪なことをするがいい。
君は私の生命の与奪を握っており、
君の愛が無くなれば、私の命も尽きる、
私は君の愛を頼りに生きているのだから。
だから私は最悪の事態を恐れる必要はない。
少しでもその気配があれば私の生命は尽きる。
私はましな状態にあると思っている、
君の気分に左右されている状態よりは。
君は移り気な心で私を苦しめることはできない。
君の心が変われば私の生命は終わるのだから。
ああ、私はなんと幸せなことか、
君の愛を得て幸せとなり、愛ゆえに死ねるとは!
だがどんな美しいものにも傷はつきもの、
君は不実かもしれないが、私には分からない。
【私の鑑賞】
青年は詩人の生命の与奪を握っている。
詩人は青年の愛を頼りに生きている。
青年の愛が絶えれば、詩人の命もそこで絶える。
だから詩人は最悪の事態を心配する必要はないという。
詩人は青年の愛を得て幸せを感じ、愛を失えばその愛のために死ねる悦びを感じる。
詩人は、青年が心変わりするかもしれないと思っているが、今はそれが分からない。
詩人は不確実な確実性の中で束の間の幸せを感じようとしている。