91 喜びは人それぞれ

 

ある者はその出自を誇り、ある者はその知識を、

ある者はその富を誇り、ある者は体力を、

ある者はその衣裳を誇るが、俗悪趣味の流行品、

ある者は鷹や猟犬を、ある者は馬を誇る。

 

すべて気質にはそれぞれの快楽があり、

それが見出す悦びは他を超えている。

しかしこういった個々の悦びは私の関心事ではない。

私には一つですべてのものに勝るものがある。

 

君の愛は私には高貴な生まれに勝り、

富より豊かであり、高価な衣裳より誇らしく、

鷹や馬よりも喜ばしい。

君を所有することが、すべての人の誇りに勝る。

 

  みじめな思いをするのはただ、君がこのすべてを

  奪って、私をみじめにさせることを恐れてのこと。

 

 

【私の鑑賞】

人の悦び、快楽はその人の気質に応じてそれぞれ異なる。

人の幸福感もそうである。

詩人は、高貴な生まれ、富、狩猟の鷹や猟犬、馬など所有する喜びより、青年の愛を所有することに何よりも喜びを感じ、それを誇りに思う。

だから詩人がみじめな思いを抱くのは、青年の愛を失うことであり、そのことを考えるだけでもみじめな思いになる。