私が何か過ちを犯したので見捨てるというのなら
私からその罪について説明を加えよう。
私の足萎えを指摘されれば、すぐにも足を引きずって見せよう、
君の言い分に反論することはできない。
愛しい人よ、君の望み通り体裁を繕うため
私のことを貶そうとしても
君の意向を知っている私の半分も貶すことはできない。
私は君との関係を断って知らないふりをしよう。
君の出歩く処を避け、私の舌に
君の甘く愛しい名前を二度と口にすまい。
余りにも不敬な私が、君の名を汚したり
二人の古い仲をうっかり漏らさないようにしよう。
君のために、私は我が身と戦うことを誓う、
君が憎む者を私は愛してはならないから。
【私の鑑賞】
88番のソネットの主題が続く。
88番では、青年が誓いを破っても詩人は青年の方が正しいと主張するために詩人自身と争うことを誓い、89番ではさらに青年の主張に抗弁できない理由を説明する。
青年が詩人に対して非難する口実以上に、詩人自身が自分の非を熟知しているので、詩人は青年の誹謗の正当性を主張できるという。
詩人は青年の名を汚さないために、青年とは無関係を装い、青年の名前すら口に出すことを控えると述べ、そのためには自分自身と争うことを誓う。
詩人はなぜここまで青年に対してへりくだり、卑下するのか。
詩人の自分自身への中傷誹謗は青年の高潔さをいっそう高めるだけでなく、詩人の青年への献身を伝えるためだけであろうか。
詩人は青年の愛のために本当に身を引くつもりであるのか、次なる発展をみよう。