85 沈黙の称賛

 

私の詩の女神は礼儀正しく口を閉ざして沈黙を守るが、

一方君を称賛する評言は、豪華に飾り立てられ、

ミューズの女神を総動員して磨き上げた美辞麗句を

黄金の筆先で君の容姿を記録に留める。

 

私はよい想いを抱くだけだが、他の詩人たちは立派な言葉を書く、

才人が洗練された筆使いで、磨き上げられた文章で

書き上げた讃美歌のすべてに対し、私は

無学な教会の書記のように、「アーメン」と唱え続けるだけだ。

 

君が称賛されるのを聞いて、私は「そう、その通りだ」と言い、

最高の賛辞に添えてさらに付け加える、

だがそれは私の思いの中にあるだけ、君への愛の思いは

(言葉では後れをとっても)真っ先にある。

 

  だから、他の詩人たちには実のない言葉を評価し、

  私には、実を語る沈黙を評価してほしい。

 

 

【私の鑑賞】

詩人はライヴァルの詩人に屈して沈黙を守るしかなくなったのか。

詩人は他の詩人と競争して言葉による称賛を諦めた(と言いながらも実は言葉で書いているのだが)。

他の才能優れた詩人が美辞麗句を連ねて青年を賛美した詩にはとうていかなわず、またそれが実のないことだと思う。

しかし言葉では他の詩人に後れをとっても、青年を愛する心の思いに引けを取らない。

他の詩人たちが青年を称賛すれば、その通りだと賛同するが、口には出して言わない。

心の中で称賛することこそ、一番の賛辞だと考える。

沈黙こそ最高の賛辞であることを、詩人は青年に評価してほしいと願う。