84 君は唯一無比

 

「君は唯一無比」、この最高の賛辞にまさる

称賛を言うことができるものが他にいようか、

君の美に匹敵する手本が育つ宝庫は

君の囲いの中にしかない。

 

詩人のやせ細った筆の力では

その主題にわずかな栄光も与えることができない。

しかし君のことを書く詩人は、

「君は君である」と書くだけで、その詩に威厳がつく。

 

詩人は君の中に書かれたものを写すだけでいい、

自然が美しくこしらえたものを悪くすることはない、

そのような複写は詩人の技量を有名にし、

その文体もいたるところで賛美されるだろう。

 

  君は君の祝福された美貌に呪いを加えることになる、

  賛辞を好めば、君への称賛を貶めることになるから。

 

 

【私の鑑賞】

詩人は、沈黙こそ最高の賛辞であると謳った後、君は唯一無比の存在であるので、「君は君である」というだけで最高の賛辞であるという。

すべての美の元(賛辞の源)は青年の中に秘蔵されているので、ただそれを模写するだけで、詩人はその詩才を称賛され、賛美され、それは必然的に青年への賛辞となる。

だから青年は、詩人たちの賛辞を望んではならないと戒める。

それは青年の祝福された美を呪われたものにするだけだという。

青年はただそこにいる、それだけで賛辞の的であるから。