君に化粧が必要だと思ったことはない
だから君の美しさに化粧を施したこともない
私には分かっていた(と思っていた)、君が
詩人の恩義たる不毛な賛辞を凌駕していたことを。
だから私は君のことを書くのを怠っていた
君は、実在することで、君自身をよく表現しているので
並みの詩人の筆では遠く及ばない
美質を語ろうにも、どんな美質も君の中にある。
この沈黙を君は私の罪と考えるが
黙っていること、沈黙こそ私の栄誉なのだ
黙っていることで、私は美を傷つけないが
他の詩人は命を与えようとして、死を招いている。
君の美しい目の一つにさえ強い命がある
二人の詩人が作りだす称賛以上に。
【私の鑑賞】
青年の美について化粧が必要ないというのは、美をほめたてるお世辞が必要ないということであり、パトロンに対する義務ともいうべき献辞の称賛が必要ないということである。
君はそんな称賛をはるかに凌駕していて、青年は存在そのものが表現であり青年の美が自己表現しているので、どんな詩人の筆もそれを表現することはかなわない。
だから私は黙っているのだと言う。黙っていることが最高の称賛だと詩人は言っているが、実際にはそう語ることで、青年を称賛している詩人のアイロニイがある。