80 私は小舟

 

ああ、君のことを書こうとすると気が萎える

もっとりっぱな詩人が君の名を使って

全力を尽くして称賛するので

君の名声を語ろうにも口を噤むしかない。

 

ところが君の心は広い海原にも似て、

粗末な船もりっぱな帆船同様に運ぶので、

彼の船よりはるかに劣る私の小舟も

君の広い海原に勝手気ままに現れる。

 

私は君のほんのわずかなお情けで浮かぶが

彼は君の底なしの海を悠々と乗り切っている。

私は難破しても、取るに足りない小舟だが

彼は堂々とした作りのりっぱな船だ。

 

  彼が栄えて、私が捨てられるとしても

  せいぜい、私の愛の破滅でしかない。

 

 

【私の鑑賞】

ライバルの詩人の技巧と詩人の詩法を較べれば、豪華な帆船と小舟の違いほどもあるので、詩人は青年のことを書こうとしても気が萎える。

だからライバルの詩人が青年のことを書けば、詩人は筆を置くしかないという。

それでも、青年は寛容な心の持ち主なので、詩人は青年の前に勝手気ままに現れる。

詩人は青年のわずかな援助があれば浮かぶこともできるが、ライバルの詩人は青年の深い愛と大きな援助を得て悠々と過ごしている。

ライバルの詩人が青年の庇護を受けて栄えれば、詩人は捨てられ、青年への詩人の愛が身の破滅となる。

詩人は、ライバルの詩人に気圧されてしまったように見えるが、果たしてこのままであろうか?!