私だけが君の助けを求めていた時には
私の詩だけが君の恩恵のすべてを受けていた。
だが今では君の恩恵を受けていた詩も衰え、
私の病める詩神は他の詩人に道を譲った。
愛しい人よ、君という美しい主題は
もっとりっぱな詩人の仕事にこそふさわしい。
だがその詩人が君から創作するものが何であれ
それは君から奪ったもので、それを君に戻すに過ぎない。
彼は君に美徳を捧げるが、その言葉は彼が
君の行為から盗み出したもの。彼が与える美は、
君の頬から見出したもの。彼が君に与えることができる
称賛は君に備わったものに過ぎない。
だから彼が言うことに関して感謝する必要はない、
彼が君に借りたものを、君自身が支払っているのだから。
【私の鑑賞】
シェイクスピアがこれまで詩を書いてきたのは青年の庇護があったからであり、青年という主題があったからである。
青年が心変わりをしてライバルの詩人の庇護をし、その詩人が青年の美徳と美を称賛する詩を書くようになった今、シェイクスピアは青年の庇護を失った自分の詩が衰えてきたという。
だが、その詩人が書くものもすべて青年から生じたものであり、もともと青年のものだから青年は感謝する必要はないと言う、ライバルの詩人に対する自嘲がある。