74 詩人の心

 

だが取り乱さないでほしい、私が強引に拘束され

保釈の見込みもなく連れ去られようとも。

私の生命はこの詩の中に投資されているので、

形見としていつまでも君とともにある。

 

この詩を繰り返し読めば、君は

君に捧げられた大切なものをまた見ることができる。

土は所詮土のもの、それは土の権利であり、

私の優れた部分である私の「心」は、君のもの。

 

だから君が失ったものは命の滓でしかなく、

私の肉体が死ねば、それは蛆虫の餌となるに過ぎない、

卑劣漢のやいばに倒れた臆病者でしかなく、

君が思い出すだけの価値もないものだ。

 

  肉体の価値は、肉体が包む「心」にこそある、

  「心」とはこの詩であり、この詩は君とともに残る。

 

 

【私の鑑賞】

詩人は悲観ばかりはしていない。

肉体は滅び、土塊となる。土塊は大地に返すのが自然の習い。

だが、肉体そのものには価値はない(肉体の死には蛆虫のイメージが常につきまとう)。

大事なのは、肉体が包む心であり、その心を表象するのがこの詩である。

そしてその詩は、詩人が死んだ後にも青年とともに残る。

青年が繰り返し詩人の詩を読み返してくれることで。

そのことで詩人もいつまでも青年とともにいることができるのだ。