72 恥の上塗り

 

ああ、私にどんな取り柄があって愛すのかと

世間が君に強いて言わせることがないように、

愛しい人よ、私が死んだら、私のことはすっかり忘れてくれ、

私は君にとって何の値打もないのだから。

 

君がさもあるかのような嘘を作り上げて

私の値打以上に私のためにつくそうとしたり、

けちな真実が喜んで与える以上の

称賛を私の墓碑に掲げたりすれば別だが。

 

ああ、愛ゆえに真実でないことで私を褒めて

君の真実の愛が偽りに見られぬよう

私の名前を、私の肉体とともに葬り、

これ以上私や君を辱めないでほしい。

 

  私は自分が産み出したもので恥をかき、

  君は価値のないものを愛して恥をかく。

 

 

【私の鑑賞】

青年に愛される資格など持ち合わせていないと詩人は言う。

世間の人はそんな詩人のどこが気に入って愛すのかと青年を問い詰めるかもしれない。

だから詩人は、自分が死んだ後は自分のことなどすっかり忘れてほしいと言う。

愛される価値がないという卑下も、自分のことなど忘れてくれということも、みんな反語的に、詩人が愛されていることを自負しているように聞こえる。

詩人は自分が産み出したもので恥をかいているというが、それはこの一連のソネットのことか、あるいは世間から一段低く見られている芝居のことまで含めてのことか。