67 汚れた時代

 

ああ、なぜ腐敗の世界に彼は生きるのか、

彼がいることで悪徳も美徳に見え、

罪悪が彼によって利を得、

彼との交友で箔を付けるためか。

 

なぜ、化粧で彼の頬に似せて、

生き生きとした表情から死人の表情を盗みだすのか、

なぜ、貧相な美は不実にも

彼という真の薔薇がありながら、模造品を求めるのか。

 

なぜ、彼は生きるのか、自然が破産した今、

頬を染めた鮮やかな血管も血をこと欠き、

自然は彼を別にすれば蓄えとて他になく、

子宝を誇ろうとも、彼の富に頼るのみというのに。

 

  自然が彼を蓄えていたのは、昔、こんなひどい世になる前、

  どんな富を所持していたかを示すためなのだ。

 

 

【私の鑑賞】

いつの世も過去は美しく、現在は汚れて見えるものらしい。

そんな腐敗した世の中に、彼(青年)はどうして生きているのか。

化粧で美を競う今の世は、虚飾の汚れた時代、模倣の世界。

本物の美がなくなった今の世に、自然が真の美を示すために彼を残したとしか思えないと詩人は言う。